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---------------------------- 2005/05/01 管理人

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『THE 有頂天ホテル』 上を向いて歩こう

有頂天この『THE 有頂天ホテル』にはいつでも「オールスター」・「リアルタイム」・「ワンカット」・「大規模なセット」などという売り言葉がつきまとう。2006年も序盤にして今年の国内映画の一番の話題作になったことは間違いないだろう。そして私は敢えて賞賛したいと思うのである、三谷幸喜の豪華で大胆な、しかし勝ち目のない挑戦を。

二十数人にも及ぶキャラクターを登場させ、ホテルに詰め込み、それぞれにエピソードを用意する。いかにも三谷幸喜の仕事である。しかもそのキャストは並の映画10本分に値する超豪華キャストである。彼はこの映画の脚本を書き上げる時、登場人物がホテル内のどこにいるのかという表を分刻みで作成し、参考にしたそうである。つまり、ホテル内で起こっているであろう出来事の全てをそっくりそのまま抜き取ろうとしたのである。映画が省略の賜物であるのは言うまでもないが、彼は演劇出身であることを自ら認識し、その省略をできるだけ排除しようとした。だからカットを割らず、しかもリアルタイムで物語を展開させたのである。その思考の結果はこの映画によく現れていると思う。しかし、このオールスター感は逆に大胆な省略を起こすのである。二十人の二時間を描こうとすれば、単純計算で40時間かかる。しかしこの映画は2時間強である。安易な単純計算で言えば約38時間が省略されている事になる。言わば彼は20枚の上質な生地を用意し、その布の綺麗な模様だけを抜き取り、パッチワークを生成した。しかし、この映画は我々観客に対して、いい意味でも悪い意味でも、三谷幸喜に捨てられた生地がどのようなものだったのか想像することを許さないのである。

彼はまた大規模なホテルセットを建設して撮影にのぞんだ。空間的にも省略を排除するためである。それはワンシーン・ワンカットで映画を生成することを可能にするだろう。しかし、この手法も結果として大胆な空間的省略を起こしてしまうのである。その原因にこの映画の舞台がホテルである、ということが挙げられる。その模型を見る限りかなりの高層ホテルであることが想像される(このホテルがどのような構造なのか全体像が明かされる事はない)。すなわち物凄い数の人間がホテル内を上下移動していることになる。しかし、映画内でカメラは(縦)横無尽に動くものの、登場人物の上下移動を捕らえていることはほとんどない。皆、エレベーターなどで瞬間移動してしまうのである。また、セット内での撮影がほとんどのため天井を写すことができない、それによってカメラの角度が物理的に減少し、横移動する人物を横からとる機会が極めて多くなる。なにか円盤の中で映画が進んでいくような印象を受けるのはそのためだ。このホテルは無限の広がりを見せるわけでも なく、完全にキャラクターを密閉するわけでもない。だから、映っていない部屋を想像する事もできないし、密度の濃い空気を体感する事もできないのである。

確かに、複雑に入り組んだそれぞれの思惑が同時進行していくのは見ていて楽しいし、それぞれのキャラクターを生かした脚本は圧巻である。それまで様々なこと(夢や罪や従業員など)から逃亡していた登場人物たちが、クライマックスのカウントダウンパーティーで初めてほとんど全員が立ち止まる様子は感動的であった。感動的であっただけに空間的にも時間的にも、もっと丸々くりぬいて欲しかったと思うのは私だけではないはずである。

THE 有頂天ホテル公式ホームページ

[2005日本/東宝] [監督][脚本]三谷幸喜[製作]石原隆/佐倉寛二郎[製作]亀山千広/島谷能成/重岡由美子/小川泰/市川南[撮影]山本英夫[音楽]本間勇輔[出演]役所広司/松たか子/佐藤浩市/香取慎吾/原田美枝子/唐沢寿明/津川雅彦
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