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---------------------------- 2005/05/01 管理人

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エレファント スタンダードサイズのパーソナルエリア

エレファント デラックス版映画館でスタンダードサイズの映画を見るのは久しぶりです。大作映画(シネスコ)の華々しい予告が一通り終わり、さあいよいよ本編だ、っていうときに両側からカーテンがガーっと閉まってきて、スタンダードサイズになるとちょっと損した気がしますよね。それと、ああ!もっと前のほうに座っておくんだった!って思います。特に渋谷のユーロスペースは要注意。後ろのほうに座ってると、もぐりだと思われがちです(まあもぐりで結構ですけど)。

エルミタージュ幻想昨年ユーロ・スペースで見た『エルミタージュ幻想』のようにカメラは人物の後をつけていきます。かの映画ではエルミタージュ美術館内を人物がうろちょろし、美術館、展示品を人物の背景に映りこませることでロシアの歴史を描いていました。『エレファント』も同様に高校の建物全体をロケ地として使っていて、その中で人物がうろちょろします。しかしスタンダードであることで、映りこむ背景は狭く、周囲にあるものの多くが排除されています。また被写界深度の浅いレンズは人物にフォーカスしていて、ポートレート風に背景がボケています。断片化された背景の情報は、画面外からの環境音とともに、生徒が感じるパーソナルな空気感を伝えています。

人も含めて動物にはパーソナル・エリアというものがあるそうです。自分の体の周囲は、一定範囲の同心円状の縄張りであり、他人と自分の分かれ目です。(やくざのおじさんが肩を張って足を投げ出して歩くのは、パーソナル・エリアの誇示だそうですね。)個人個人は各々の円を周りに設定しながら、普段はその周りの背景にはフォーカスしないでうろついています。時々すれ違いざまに円と円が重なったりして、それはあたかもスタンダードの狭い画面に他人が映りこんでくるようなことです。円が重なるところに縁が生まれます。気になる異性(もしくは同姓)と会えば、色目を飛ばします。縁があれば狭いシャワールームでキスをしてひとつに円満します。敵同士が重なれば、ガンを飛ばしあうのでしょう。または殴りあうかもしれません。

ただ、現代は飛び道具が発達しすぎたのかもしれません。円を交わらせる必要もなく敵を撃つことができます。迫激戦の時代は終わって、ミサイルを撃つべきか撃たざるべきか、仲間と相談するだけです。しかしそれでは平和は訪れようもない。小泉訪朝の成果はどうであれ、まず訪朝しなければ話にならなかった。敵と円を交えずして、敵と円満するなんてことは絶対にできないのです。クラスメートが投げたティッシュ爆弾の真意はわかりません。敵の円を近づけようとする牽制球なのか、逆に遠ざけようとする牽制球なのか。わかっていることは、牽制球だけ投げていても試合は一向進まないということです。

強力な飛び道具をたくさん携えて学校に乗り込んだふたりが、遠くから敵を狙います。もし校長が自分の近くで命乞いをしていたら、一旦解放し、円が離れたところで射撃します。撃つほうも撃たれたほうも、スタンダードの狭い画面ではお互いを確認しようもないほど離れています。引かれた引き金と打ち抜かれた胸の間にある、歩み寄りを拒絶する隔たりは、「あなたを殺した」因縁をもわからなくしてしまいます。

エレファント ホームページ
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[2003米/東京テアトル=エレファント・ピクチャー][原題]Elephant
[監督][脚本]ガス・ヴァン・サント[製作]ダイアン・キートン/ビル・ロビンソン[製作]ダニー・ウルフ[撮影]ハリス・サヴィデス[出演]アレックス・フロスト/ジョン・ロビンソン/エリック・デューレン/イライアス・マッコネル/ジョーダン・テイラー/ニコル・ジョージ/ブリタニー・マウンテン

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この記事に対するコメント

手が込んでいるのに分り易くて面白い評論だと思います。
観送ろうと思っていましたが、エレファント、やっぱり観たくなりました。
うつら | 2004/05/31 9:01 AM