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---------------------------- 2005/05/01 管理人

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みなさん、さようなら 私にはそのユートピアが信用ならない

みなさん、さようならビッグ・フィッシュのあとに見ますと、何だか暗い。コメディーなのに。画面の色は薄ら暗く、音楽も重たい。ビッグ・フィッシュがのめり込ませてきたようには観客を映画世界に没入させてくれません。物足りない気持ちで数日過ごしてみて、段々とああなるほどと沁みてきました。

教師で社会主義者の父親がべらべらと喋り立てるまでもなく、この映画はインテリのものなのです。それもちょっと昔のインテリ。個人主義、自由主義、こんなキーワードが浮かんできます。

息子が死にゆく父と救急車に乗っています。こんな場面でも携帯電話で仕事の相談をしています。父は口悪くそれを批評しますが、強く諫めて止めさせたりはしません。その態度を息子は受け継いでいて、息子は父と会話を交わすわけでもなく、全く自分の自由に父が快適に過ごせる病室を用意してしまいます。父の病室は友人が集まってサロンになります。みんな自分のことばっかり話しています。「あなた具合はどうなの」ではなくて「私はこうだ」「私はこう思う」と。そこに妻と愛人二人が同席しているのに、彼女たちがお互いにいがみあったりしなくてすむのは、お互いの自由を侵略しないルールが守られているからです。もし自由を奪うような侵略者、例えば「痛み」が襲ってくるならば、モルヒネなりヘロインなりの禁止薬物さえも有効に自由を支持してくれます。テクノロジーも自由のためにあります。だから自由な娘は洋上から、ネット経由で死にゆく父へビデオレターを送ります。

そして父は思う存分友人と議論をかわし、死の直前まで自由を謳歌できたと納得して、自ら生に終止符を打ちます。日本ではインフォームド・コンセントが問題として取りざたされていますが、こんな円満な死はなかなかありません。

ここにひとつのユートピアが実現しています。しかしそれを息子や娘が受け継ぐことができるのかどうかは、まだわかりません。個人主義や自由主義の思いがけない弊害は、親子の関係にでます。お互い干渉しない関係の中で、子供が親の背中を見ているだけで、または親が残した書物を受け継ぐだけで、果たして思想は受け継がれるのでしょうか。いやそれすらも構わないのが、この世代の父であるかもしれません。好きにしろと。

やはりまだ、あの暗い色調と明るいユートピアの取り合わせに違和感を拭えないでいます。たった一度抱擁するだけで息子はわかってくれる、と楽観的にアカルイミライを期待している父の世代に、私の世代の息子たちは随分イラついているのだと思います。

みなさん、さようなら ホームページ
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[2003カナダ=仏/コムストック][原題]Les invasions barbares
[監督][脚本]ドゥニ・アルカン[製作]ドゥニーズ・ロベール/ダニエル・ルイ[撮影]ギィ・デュフォ[音楽]ピエール・アヴィア[出演]レミ・ジラール/ステファン・ルソー/マリー=ジョゼ・クローズ/ドロテ・ベリマン/ピエール・キュルジ/イヴ・ジャック/ルイーズ・ポルタル
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