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---------------------------- 2005/05/01 管理人

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スパイダーマン2 人生をわたる−遅刻してもしなくても−

スパイダーマン 2 [SUPERBIT(TM)]『雪国』の引用は勘弁させていただくこととして……、作家は小説の書き出しにありったけの命を吹き込みます。この映画のオープニングに私はめまいがするようでした。めくるめく現れるクモの糸によってスクリーンは幾度となく分断され、その断片に現れたと思われたマンガ『スパイダーマン』の1コマ1コマが、その一瞬後には糸に絡めとられるようにして消え、あるいは次の糸がもたらす新たな1コマの裏側に隠れていきます。マンガを紙の上に束縛し続けたコマも、今や糸のすきまで自在に動かされ、変形され、奥に手前にどんどん積み重ねられていきます。「これは映画だ!」サム・ライミの狂喜の叫びが聞こえてきそうです。本編が始まります。

マスクを被っていないピーター、情けないことといったらありません。彼を取り巻く社会、地上は、障害物だらけです。わかりやすいのは車の渋滞の列。自転車に乗るピーターの行く手を阻み、それだけならまだしも、後ろから車が追突してくる有様です。ありえません。あまりに悲惨で、あまりに突飛なので、世界(=映画)がピーターに意地悪をしているように見えてしまいます。いや実際にこれは映画なので完全に仕組まれた不運であり、それが露骨に感じられて、そこにはいわゆるマンガ的な構築性があります。しかしオープニングが終わってすぐのシーンで、目の前の障害物(ピザ屋の上司)に激突しそうになり、自転車が大げさなアクション(後輪が浮き上がる)で急停止する不運も、それはその直前までMJの看板に見とれてぼけっとしていたピーターのせいだということになっています。要するに、彼に降りかかるすべての悲惨なまでの不運は、世界が意地悪をしているのではなく、彼自身がぼけっとしていて常に一歩遅れているがためで、全部彼の責任です。

立食パーティーで最後の一つの飲み物を取り損なう(一瞬前に他の人に持っていかれる)にしても、家賃を滞納するにしても、全ての約束に遅れてしまう遅刻魔ぶりにしても、地上のピーターはいつでも一歩遅く、時間に間に合わず、社会に認められません。もちろん彼には彼なりの理由があり、MJに恋をしていたり、ヒーローとしては困っている人を見逃せなかったりするからこそ、遅れているわけです。しかし彼の事情は考慮されることなく、ピザ屋の上司をはじめとして社会の人々は彼を一面的に捉えてダメのレッテルを貼ってしまいます。「本当はヒーローもやっているから忙しくてしょうがないんだ」なんてことは言えません。いや、きっとそう言ったところで問題は解決しないでしょう。ピザ屋に対してはピザを時間通りに届けるという責任を全うしない限り認められないのです。世界の平和も含めて全てを引き受けて、自分の中に多面的な矛盾を抱えたままでは、各々の一面的な責任をひとつひとつ果たすことは難しいようです。

余談ですが、僕らのパーマンの場合、この問題をコピーロボットで解決しようとしましたね。身体がふたつあれば、なんて思うことはままあります。しかし、そううまくはいかないのが僕らのパーマンでした。実際身体がふたつあって処理能力が2倍になったとしても、それは2倍の問題を解決できるかもしれないというだけで、全ての矛盾を乗り越えた根本解決は望めないのでしょう。最終的にはあれを引き受けるがあれは引き受けない、といった選択をするほかないようです。

マスクを被ってスパイダーマンになると、障害物の多い地上という平面を抜け出て、より自由な3次元的な運動を手にすることができます。この時、彼に遅れは許されません。糸を出すのが一瞬でも遅れたら、地面に真っ逆さまなのですから。うまく糸を出している限りはピーターであるときよりもずっと迷いがなくなっているようです。迷い無く判断し、超人的な力を発揮することによって、幾分処理能力が上がりました。が、これはパーマンがコピーロボットを使うのと同じことです。ですからいくらスパイダーマンが超人であろうとも、やはり全てを引き受けることはできません。いかにビルの谷間を縦横無尽に飛んだとして、4次元的な力はないわけですから、いつか限りある時間の壁に衝突してしまうはずです。いつもぎりぎりです。いまのところかろうじて致命的ではないでしょうが、スパイダーマンもまた、いつ時間に遅れるかわかりません。

いくら全てを引き受けたくても、時間的にも身体的にも限界があります。それはピーターがスパイダーマンであろうがなかろうが同じことです。ピーターがあっさりと何かを捨て、あっさりと何かを選ぶことができたときに、ピーターの遅刻はなくなり、この物語が終わるはずです。しかし実際にそういう風に割り切ることは不可能ですよね。全てを引き受けたいという理想を持ちながら、いつもぎりぎりで選択を迫られていることこそが、生きる原動力のような気がします。ピーターの場合、スパイダーマンをやめられない以上、彼はずっと矛盾の中に居続けるでしょう。物語とは彼の人生であり、広くみんなの人生です。矛盾や悩みを抱えているせいで、遅刻して少し現在をはみ出してしまったとしても、その分を未来が受け止めてくれているうちは、物語が紡がれていくのかもしれません。

そしてスパイダーマンになったピーターはもっと厳しいところで選択を迫られていて、もはや遅れることも許されません。ぎりぎりまで悩んで、ぎりぎり間に合うようにして決断の糸を未来へ向けて投げないことには、地面に落下してしまうのです。そうして死んでしまって物語を終わらせてしまわないために、悩みを体現したように激しくねじらせた身体をビルの谷間に投げ出し、未来へ向けて糸を放って時間の中を進んでいく姿が、まさに悩ましく、私を惹きつけています。

[2004米/ソニー・ピクチャーズ][監督]サム・ライミ[製作]スタン・リー/ジョセフ・M・カラッシオロ/ケヴィン・フェイグ[製作]ローラ・ジスキン/アビ・アラド[脚本]アルヴィン・サージェント[撮影]ビル・ポープ[音楽]ダニー・エルフマン[出演]トビー・マグワイア/キルスティン・ダンスト/アルフレッド・モリーナ/ジェームズ・フランコ/ローズマリー・ハリス/ドナ・マーフィー/J.K.シモンズ

スパイダーマン2 ホームページ
[amazon][DVD] スパイダーマン 2 [SUPERBIT(TM)]

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