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---------------------------- 2005/05/01 管理人

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茶の味 小津安二郎=オタク?

山よ『茶の味』という題名を聞いて思いついてしまうのはやはり小津安二郎です。というのも小津には『お茶漬けの味』という作品があるからです。また小津安二郎の遺作である『秋刀魚の味』の仏題が『酒の味』であることも海外、特にカンヌでは話題になったようです。ある一家の日常(?)を追って進行していくこの『茶の味』について喋る時に小津作品が引き合いに出されるのは当然の事なのです。石井監督本人は小津安二郎よりも清水宏に共通点を感じているようですが、彼は『大学は出たけれど』の原作者でもありますから結局のところ小津安二郎にたどり着いてしまうわけです。

少々強引ではありますが、僕も『茶の味』を小津安二郎を頭に入れつつ考えてみることにします。あんな馬鹿なギャグ映画を小津作品と比べるなんて何事だ、とおっしゃる方もいるでしょうが、小津安二郎の映画は何もいつも娘の結婚に頭を悩ませている父親ばかりが出てくるわけではありませんし、特に初期の作品にはユーモラスな作品も多いです、実際『茶の味』のように僕が笑うポイントもたくさんあります。父と娘というイメージが強いのはやはり小津映画=笠智衆&原節子、『東京物語』という印象が強いからでしょう。『東京物語』もすばらしい作品ではありますが小津安二郎をこのイメージだけに縛ってしまうのはすごく勿体ない事です。小津作品をリアルタイムで観ていた人々は僕が『茶の味』を観る時の様にケラケラ笑っていたのでしょうから。

『茶の味』には坂野真弥という女の子が出てくるのですが彼女のボーっとした演技は異様なこの作品の中によく馴染んでいたと思います。小津の映画にも『生まれてはみたけれど』や『突貫小僧』など子供に焦点をあてた作品もあります。小津の作品にはボーっとした子供はあまり出てきませんが・・・。こんな所も共通点ということができるのではないでしょうか。もうひとつの共通点あげるにあたって必要なキーワードは「反復」でしょう。小津安二郎は反復を描き続けた作家でもありますが、この『茶の味』でも多く反復が急ぎ足で展開されます。主人公の少年ハジメは好きな女の子に声をかけられないという反復を克服しますし、ノブオとハジメは必ず電車に乗って帰ります。次女の幸子(さっき書いた坂野真弥)の悩みである大きな自分の幻覚を克服する手段は浅野忠信扮するアヤノの昔話(むかし取り憑かれた幽霊を逆上がりによって克服した、けれど実はその霊の遺体が発見されるタイミングと一致しただけ)と反復していますし、毎日の生活の中でおじいは突然音叉で自分の声の音を合わせ続けます。『茶の味』がおじいの死によって一応の結末を迎えるというのも小津的といえば小津的です。

では『茶の味』と小津の作品とではどこが違うのでしょうか?全然違うよと言われればそれまでなのですが、やはり時代が違うということが大きいと思います。その時代の差が映画に現れてくるのは当然です。僕の友人は『茶の味』はオタク映画であると言っていました、オタクである彼が言っていたので間違いないのでしょう。確かに小津が映画を作っていたころにはオタクというもの(言葉)は無かったでしょうから小津の映画はオタク映画ではないことになります。オタクというのは自分のイメージを具現化するのが好きな人種であると思います。ですからオタク=アニメ、フィギュアということになるのでしょう。映画の登場人物である春野家の人々の職業がアニメーターであったり漫画家、催眠治療師など人間のイメージを扱うものであったり、劇中のテレビに出てくる向日葵が幸子のイメージを縛っているという事などはその意味で象徴的と言えるでしょう。フィギュアや着ぐるみを作って撮影している青年たちも直接的に出てきますし・・・。もし小津が現代に生まれていたらアニメ、フィギュア好きのオタクであったという可能性や当時彼が原節子や田中絹代に抱いていた感情が「萌え」であったのではないかということを私は完全に否定することはできません。現代においては自分のイメージを映像にすることは容易になってきています。デジタルビデオカメラやパソコン、CGソフトなども個人で所有しある程度のことはできるレヴェルに達しています。オタクは限りないイメージを所有していて、それを具現化する手段も多種多様に、しかも手軽に存在します。作り手と受け手の境界線が限りなく薄くなりつつある今、限りなく受け手に近い作り手が自分の中にあるイメージを片っ端から具現化してしまった、『茶の味』はそんな映画ではないかと思います。

茶の味公式ホームページ
[Amazon CD]茶の味 Original Sound Track

[2003日本/クロックワークス=レントラックジャパン][監督][原作][脚本]石井克人[製作]飯泉宏之[製作]滝田和人/和田倉和利[撮影]松島孝助[音楽]リトルテンポ[出演]坂野真弥/佐藤貴広/手塚理美/三浦友和/浅野忠信/中嶋朋子/土屋アンナ

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