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マイケル・マン作品の主人公達には「同じコインの表と裏」という言葉が良く当てはまる。いや、そこにはどちらが裏なのか表なのか等という問題は関係ない。ただ、最近似値をとってしまうような二人の男、「プロフェッショナル」という者の現し身が、二人ないしは複数の男達の姿を取って現れる。同じマン作品である『ヒート』ならば、家族を上手く愛することが出来ず仕事に明け暮れるアル・パチーノ演ずるヴィンセント刑事と、デ・ニーロ扮する犯罪をビジネスとして請負いプロとして時には非情になりながらも愛する女性を求める犯罪集団のボス・マッコーリーは仇同士であり、また確かに同じ類の人間だ。本作『コラテラル』のタクシー運転手・マックスと殺し屋・ヴィンセントにもこの緊密な関係性は適用できるかもしれないが、少し事態は変化しているようだ。
マイケル・マンの近作『インサイダー』、『アリ』では「プロ」の現し身は確実に勝利を揚げていた。だが、『コラテラル』ではどうだろう。結末を言ってしまえば、プロに徹した者が負け、逸脱した者に勝利が訪れる。そこには広さに敗北する「プロフェッショナル」が諦めと共に緩慢な時間によって撮り上げられている。
トム・クルーズ演じる殺し屋・ヴィンセントはロサンゼルスを「だだっ広い」から嫌いだと語る。一夜の物語である本作の為に改良された特殊なデジタルカメラによって捉えられた茫漠とした夜の街の広がりは、空撮され、四散するバイパスは街灯やテールランプに彩られている。だが、拡がりを見せるのはロサンゼルスの風景だけではない。速度を押し殺す空撮によってタクシーの疾走を冗長に撮り上げ、「プロ」の殺し屋は殺害の際に無駄な動きがなく更にアクションは省かれていく。マイケル・マン監督作には長尺の作品(『ヒート』『アリ』は三時間、『インサイダー』は二時間半強)が見られるが、そうとは言えない二時間でまとめ上げられた今作でさえ、上映時間が遅延されているように感じる。
広さに負けた「プロ」は「誰にも気付かれることなく」、地下鉄に揺られていく。その姿は「プロ」の無力の表れなのか。そんな感傷的な夜景に興味はないが、マイケル・マン自身がこの作品によって同じ運命を辿らないことを祈っている。『ヒート』のラストシーンで「プロ」の現し身である二人の男が手を握り合うシーンは感動的であったはずだから
[2004米/ドリームワークス][監督][製作]マイケル・マン[脚本]スチュアート・ビーティー [音楽]ジェームズ・ニュートン・ハワード[出演]トム・クルーズ/ジェイミー・フォックス/ジェイダ・ピンケット=スミス
コラテラル公式サイト
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