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---------------------------- 2005/05/01 管理人

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『ミリオンダラー・ベイビー』 流血、血縁、止血

ミリオンダラー・ベイビーその名の通り『ブラッド・ワーク』で、イーストウッドは自分自身の「血」の問題に取り組みました。そして彼の物語は「血」から「血縁」へとシフトします。彼の血と、彼を取り巻く人々の血との間の「縁」です。ところが『ミリオンダラー・ベイビー』でフランキー(クリント・イーストウッド)は実の娘と断絶しています。彼が娘へ送った手紙はことごとく宛先不明で送り返されてしまうのです。彼の血が彼の体内をぐるぐる巡って、心臓へと絶えず戻り続けているようにです。血が縁を結ぶためには、体外へ血が流れ出す瞬間が必要なのです。

ブラッド・ワーク 特別版もともとがカットマンである彼はボクサーの血が流れ出すのを止めるという職能に優れています。試合の続行が不可能かと思われる程の流血も、彼の手に掛かればあっという間に止まってしまいます。そして自らの血の匂いを嗅いだボクサーは、彼の応急処置を受け、「自分を守れ」というアドバイスを聞いて、初めて自分の真の力を発揮し、勝利するのです。

ガントレット彼がいつも教え子に教えている「自分を守れ」という教訓は、「流れ出てしまう血を止めろ」という風にも聞こえてきます。流血の匂いが人間の防衛本能を喚起するのを彼は良く知っているのです。ですから時には彼は教え子に「敢えて打たせろ」という指示を与えたりもするでしょう。しかし同時に一旦血が流れ出てしまうリスクを恐れてもいて、流血と止血という矛盾がせめぎ合う渦中で、彼は戦わなければなりません。

ミスティック・リバーフランキーは一人前のボクサーとしての成長を遂げたマギー(ヒラリー・スワンク)に「モ・クシュラ(私の血)」という刺繍入りのガウンを与えます。彼の体内でだけ循環していた血が流れ出して、混ざり合い、マギーとの血縁に変わったのです。しかし結果的にそれはお互いにとって非常にリスキーな事態だったと言わざるを得ません。

劇中、フランキーは神父に問いました。「三位一体とは何か。」父と子と精霊が、ある時には3つで表現され、ある時には神の名でひとつに表現されてしまうような謎、これは自分の血が他人の血と同じに思われてしまうという血縁の謎に似ているかも知れません。結局彼はその謎の答えを得ることができませんでした。

ザ・ディレクターズ クリント・イーストウッドフランキーと一緒にボクサーとしての勝利を得るはずだったマギーに訪れた最悪の事態。もうボクシングができなくなり、ベッドの上で動けないマギーの身体には、流れることができなくなった血が床ずれを作ります。マギーが舌を噛み切って自殺を図ったのは、何も単なる絶望からだけでなかったのではないでしょうか。再びフランキーに向けて流れ出す血を、血縁の証を見せたかったのだと思うのです。彼女はフランキーが思うよりもずっと血縁を得た充実感を感じていたはずですから。それでもカットマンであるフランキーはマギーから流れる血――自分の血――を止めるほかありませんでした。他ならぬ「自分を守る」ためにです。縁を失った彼の血は外へ流れ出すのをやめ、再び宛先不明の手紙のように彼の体内で循環し続けます。流れ出す出口を求め、血は圧をかけて、ずきずきと傷口を痛めるに違いありません。

[2004米/ムービーアイ=松竹][監督][製作][音楽][出演]クリント・イーストウッド[製作]ロバート・ロレンツ/ゲイリー・ルチェッシ[製作][脚本]ポール・ハギス[製作]アルバート・S・ラディ/トム・ローゼンバーグ[原作]F・X・トゥール[撮影]トム・スターン[出演]ヒラリー・スワンク/モーガン・フリーマン/アンソニー・マッキー/ジェイ・バイチェル/マイク・コルター/ブライアン・F・オバーン
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